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知の難(かた)きに非ず、知に処するは則ち難し
ー非知之難也、処知則難也ー     韓非子 説難第一二
(韓非子:二十巻五十五編。戦国時代の韓非の選。先秦時代の法家の学を集大成し、
それに韓非の考えを加えたもの。はじめは「韓子」と称したが、宋以降、
唐の韓愈と区別するため、「非」の字を加えた。)

 

{原文}
宋有富人。
天雨牆壊。
其子曰、
「不築、必将有盗。」
其隣人之父亦云。
暮而果大亡其財。
其家甚智其子、而疑隣人之父。

此二人者、説皆当矣。
厚者為戮、薄者見疑。
則非知之難也、処知則難也。
故繞朝之言当矣、其為聖人於晋、
而為戮於秦也。
此不可不察。

 

{書き下し文}
宋に富人あり。
天雨ふり牆壊る。
其の子曰はく、
「築かざれば、必ず将に盗有らんとす。」と。
其の隣人の父も亦云ふ。
暮れて果して大いに其の財を亡ふ。
其の家甚だ其の子を智とし、而るに隣人の父を疑ふ。

此の二人は、説は皆当たる。
厚き者は戮され、薄き者は疑はる。
則ち知の難きに非ず、知を処するは則ち難きなり。
故に繞朝の言は当たり、其れ晋に聖人と為さるるも、
秦に戮されしなり。
此れ察せざるべからず。

 

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{口語訳}
宋にある富豪がいた。
雨が降って、家の塀が崩れた。
その家の子はこう言った、
「塀を築きなおさなければ、必ず盗みに入られるだろう。」
また、隣家の父も同様なことを言った。
日が沈んで夜になると、やはり、多くの財産を盗まれてしまった。
その家の人は、その子を賢いと褒め称えたが、
隣人の父に関しては、怪しいと考えた。

この鄭の大夫と、隣家の父との二人は、意見は全て正しいのに、
ひどい場合には殺され、軽い場合でも疑いの目を向けられた。
ということは、知識を得たり本質的に理解したり
見分けたりするのが難しいのではなくて、

それらによって得たものをどう処理するかが難しいのである。
だから、繞朝が言ったことは正しく、晋では彼を聖人だと評価したが、
秦では死刑にされた。

このようなことについては、考察せねばなるまい。

*牆(かき)ーレンガ塀
*果ーやはり
*説ー意見
*不可不~ ~しなければならない

 

{意解}
 知ることは難しくない、
知ったあとでどう対処するかが難しいのだという。

情報収集よりも情報管理(情報処理)のほうが難しいということである。
例として「韓非子 説難第一二」を揚げている。

 宋の国に金持ちの家があった。
ある日、大雨で塀が壊れたのを見て、息子が語った。
「塀を修理しないと、必ず泥棒に入られてしまう」
隣家の主人も同じことを言ってきた。

 その晩に、やはり、泥棒にはいられて、
ごっそり盗まれてしまった。

金持ちは、息子の賢さに感心したが、
同じことを言った隣家の主人に対しては、

「あの男が、犯人ではないか」と、疑った。

 親切に教えてやったのに、あらぬ疑いまでかけられるとは、
これほど割に合わない話はない。
私たちの周りにも、結構これに類する話が転がっている。

「韓非子」によれば、それはみな「知に処する」道を
誤ったことに起因するのだという。

 あらぬ誤解を招かぬためにも、
言葉には気をつけたいものである。

 

 中国古典一日一言 (PHP文庫 モ 1-4)


 

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