螳螂の臂を怒らして以って車軼に当たるが如し

第二章

螳螂とうろうの臂ひじを怒いからして以もって車軼しゃてつに当あたるが如ごとし

ー猶螳螂之怒臂以当車軼ー　　　荘子 外篇 天地
（荘子：三十三篇。戦国中期の道家荘周とその一門の思想を記したもの。
荘周の撰。外・内・雑編から成り、内編七編以外の大部分は、
後人の仮託になるものといわれている。「南華新経」ともいう。）

｛原文｝
猶螳螂之怒臂、
以当車軼。
则必不適任矣。

｛書き下し文｝
螳螂とうろうの臂ひじを怒いからして
以もって車軼しゃてつに当あたるが如ごとし。
则すなわち必かならず不適任ふてきにん矣なり。

螳螂の臂を怒らして以って車軼に当たるが如し

｛意解｝

螳螂かまきりが鎌かまを振り上げて 車の車輪に立ち向かっていくことで、無謀むぼうなことのたとえとして引かれている。「風車ふうしゃに立ち向かうドン・キホーテ」「像ぞうに挑いどむ蟻あり」 も同意に使われている。

蟷螂かまきりが獲物えものを狙ねらうときに前の両足を頭上にかざす姿が、斧おのを振ふるうのに似にている。虫の世界ではその斧は大きな脅威きょういともなろうが、いくら蟷螂かまきりの向う気が強くとも、これしきの斧では、 小虫以外の、大きな相手に対してはまったく威力いりょくはない。

即ち、「蟷螂とうろうの斧おの」とは、弱者が自分の分や力をわきまえないで、ただ意気がって大敵に当ったり、 猪突猛進ととつもうしんしたりすることをいうのである。

「文選ぶんせん」には曹操軍そうそうぐんの劣弱れつじゃくな様さまを諷ふうして
「蟷螂とうろうの斧おのを以もって隆車りゅうしゃ(大車)の隧すい(轍)を禦ふせがんと欲ほつす。」とある。

夢々ゆめゆめ、
一、自分の力量を自覚する
一、相手の力を知る

「彼を知り己を知れば、百戦して殆うからず」
を忘れるべきではない。

孫子 謀攻篇に「彼を知り己を知れば、百戦して殆うからず」とある。何事においても、主観的、一面的に判断をしてしまうことを戒いましめたことばである。何か事を始めるときには、可能な限り調査し、客観的に判断する冷静さが必要だろう。
「周到な準備を整え、好機を待つ。好機と見るや、すぐに行動を始める。」
昔より、秀でた指導者は皆このように行動した。ゆえに、すばらしい成功（功績）を残したのだという。

＊|隧《すい》：みち

＊参考資料：「中国古典一日一言」守屋洋(著)をもとに、
自分なりに追記や解釈して掲載しています。

私たちは、日々、何をするにしても
大なり小なり、決断（選択）をしている
その折々に思い出し、
より善い選択（決断）ができるように
貴方も私も　在りたいですね。