第七章 人と接するための心得
信言は美ならず、美言は信ならず
ー信言不美、美言不信ー 老子 第八十一章
(老子:二巻八十一章。人為、虚飾を去って、無為自然であるべきことを説いている一名「道徳経」)
{原文}
信言不美、美言不信。
善者不辯、辯者不善。
知者不博、博者不知。
聖人不積、既以爲人己愈有、
既以與人己愈多。
天之道、利而不害。
聖人之道、爲而不爭。
{書き下し文}
信言は美ならず、美言は信ならず。
善なる者は弁ぜず、弁ずる者は善ならず。
知る者は博からず、博き者は知らず。
聖人は積まず、既くを以て人の為にして己愈有り、
既くを以て人に与えて己愈多し。
天の道は、利して害せず。
聖人の道は、為して争わず。
{意解}
真実の言葉は苦く耳に快く響かない、
飾り気のある耳に快い言葉は真実味がない、
という意味だ。「老子」の逆説的表現である。しかし、現実問題として、
信言と美言を判断するのは、容易ではない。
良好な人間関係を保とうとするのは難しい。
美言の代表は、お世辞である。歯の浮くようなお世辞、見えすいたお世辞、
これはすぐにでも判断がつく。しかし、巧妙なお世辞になると、
ついついその気になってしまう。
お世辞ならまだ実害が少ないのでまだ良いが、問題は甘い言葉に隠された真意である。
男女の恋愛関係になると、一生に多大な影響を与えることもありえるし、
お金も絡めば、心身共に打ちひしがれる。
「美言は信ならず」「老子」のこの言葉を忘れず肝に銘じておくべきだろう。
以下原文口語訳
優れた人はしゃべりたてることはしない、言葉巧みな者は優れた人ではない。
賢人は物知りではない、物知りを自慢顔の人は賢い人ではない。
聖人は自分のために蓄財などしない、彼は他人のために生きて、
自らはますます豊かに富む。
彼は他の人々に与え続けて,自らはますます豊かな物(心)であふれていく。
天の「道(タオ)」は、(万物を)祝福し,害しない。
聖人の道(聖人が踏み行う生き方)は,成し遂げられても,他人と争うことをしない。
*参考資料:「中国古典一日一言」守屋洋(著)をもとに、
自分なりに追記や解釈して掲載しています。
私たちは、日々、何をするにしても
大なり小なり、決断(選択)をしている
その折々に思い出し、
より善い選択(決断)ができるように
貴方も私も 在りたいですね。