第二章　自己を高める

第二章　自己を高める

 

蓬よもぎも麻中まちゅうに生しょうずれば、扶たすけずして直なおし

ー蓬生麻中、不扶而直ー　　　荀子 勧学篇第一
（荀子：二十巻。戦国時代末期の学者、荀況の書。荀況は孟子に次ぐ大儒。
孟子の性善説に対して、荀況は性悪説を唱えた。）

｛書き下し文｝

蓬ほう（よもぎ）も麻中まちゅうに生ずれば、扶たすけずして直なおし、
白き沙すなも涅どろの中に在あれば、之これと倶ともに黑くろなり。
蘭槐らんかいの根、是これを芷しと爲なす。
其それ之これを滫しゅうに漸ひたせば、君子は近ちかづけず、庶人は服ふくせず。
其その質美しつびならざるに非あらざるなり、漸ひたす所の者然しかればなり。
故ゆえに君子は居いるに必かならず鄕きょうを擇えらび、遊あそぶに必かならず士しに就つく。
邪辟じゃへきを防ふせいで中正ちゅうせいに近ちかづく所以ゆえんなり。

＊蘭芷らんし：ランとヨロイグサ。ともに香草。転じて、賢人や美人のたとえ
＊滫しゅう：とぎじる
＊鄕きょう：ごう、さと
＊邪辟じゃへき：でたらめでゆがんでいる
＊中正ちゅうせい：かたよらず、公正であること