第六章　成功の心得

 

第六章　成功の心得

 

小利しょうりを顧かえりみるは則すなわち大利だいりの残ざんなり

ー顧小利則大利之残也ー　　　　韓非子 十過
（韓非子：二十五巻五十五篇。戦国時代の韓非の撰。先秦時代の法家の学を集大成し、それに韓非の考えを加えたもの。はじめ「韓子」と称したが、宋以後、唐の韓愈と区別するため「非」の字を加えたもの。）

｛書き下し文｝

十過
一に曰く、小忠しょうちゅうを行おこなうは則すなわち大忠だいちゅうの賊ぞくなり。
二に曰く、小利しょうりを顧かえりみるは則すなわち大利だいりの残ざんなり。
三に曰く、行僻こうへきにして自みずから用もちい、諸侯しょこうに礼れいなきは、則すなわち亡身なきみの至いたりなり。
四に曰く、治じを聴きくに務つとめずして五音ごいんを好このむは、則すなわち窮身きゅうしんの事じなり。
五に曰く、貪愎たんぷくにして利りを喜よろこぶは則すなわち滅国殺身めっこくさつしんの本もとなり。
六に曰く、女楽じょがくに耽ふけり、国政こくせいを顧かえりみざるは、則すなわち亡国ぼうこくの禍かなり。
七に曰く、内を離れ遠く遊びて諫士かんしを忽ゆるがせにするは、則すなわち身を危あやうくするの道なり。
八に曰く、過あやまつも忠臣ちゅうしんに聴きかずして、独ひとりその意いを行おこなうは、則すなわちその高名を滅ほろぼし人の　　　　　笑いとなるの始はじめなり。
九に曰く、内は力を量はからず、外は諸侯しょこうを恃たのむは、則すなわち国削けずらるるの患うれいなり。
十に曰く、国小にして礼なく、諫臣かんしんを用もちいざるは、則すなわち絶世ぜっせいの勢いきおいなり。

＊行僻こうへき：行いが正常でないこと