第一章 大きく生きる
功遂げ身退くは天の道なり
ー功遂身退、天之道也ー 老子 道徳経 下篇
(老子:二巻八十一章。道家の祖。老耽の撰と伝えられるが、
老耽が実在したか否かは明らかではない。
人為、虚飾を去って、無為自然であるべきことを説いている。別名「道徳経」)
{原文}
持而盈之、不如其已。
揣而鋭之、不可長保。
金玉滿堂、莫之能守。
富貴而驕、自遺其咎。
功遂身退、天之道也。
{書き下し文}
持してこれを盈たすは、その已むるに如かず。
揣りてこれを鋭くするは、長く保つべからず。
金玉堂に満つるは、これを能く守る莫し。
富貴にして驕るは、自らその咎を遺す。
功遂げ身退くは、天の道なり。
{和訳}
持って、そしてこれを溢れるほど満たそうとすることは、
それはやめておくにこしたことはない。
鍛えて、そしてこれを鋭くしても、 長く保つことはできない。
金や玉が堂を満たしても 是をよく守りとおすことはできない。
富貴にして、おごり高ぶっていると、 自らその咎がのこるだけである。
功を成し遂げたなら、身を退く、 (これが)天の道である。
{意解}
この「老子」書で取り上げたのは
漢の劉邦に仕えた、 張良(軍師)である。
彼は劉邦に天下取らせるや 「いま、わたしは三寸の舌をもって帝王の師となり
1万戸の領地を拝領して列候に連なっている。これで私の役目も終わった。
あとは俗世を捨てて仙界に遊びたい」 と云って政界を引退し余生を楽しんだという。
政界、財界、近くは公司(会社)に於いても成し遂げた後の
引き際を知覚(自覚)することは 非常に難しいが、
心の隅に止めておくべきなのかもしれない。
史記 春秋戦国 秦にも「四時の序、功を成す者は去る」とある。
始皇帝が統一する前の秦国の宰相、范雎は内政・外交に卓越した手腕をふるい、
君主の信頼も厚く絶頂期にあった。そこに蔡沢という人物が、
引用して引退を勧告したことばである。
「四時の序」とは、春夏秋冬、四季が移り変わる意。
春は春の役割を終えれば夏に、
夏は夏の役割を終えれば秋に主役の座を譲り、
舞台の裏に身を引く。
「人間もそうあるべきだ」と語っている。
参考資料:「中国古典一日一言」守屋洋(著)をもとに、
自分なりに追記や解釈して掲載しています。
私たちは、日々、何をするにしても
大なり小なり、決断(選択)をしている
その折々に思い出し、
より善い選択(決断)ができるように
貴方も私も 在りたいですね。