怨みは深浅を期せず、それ心を傷うに於いてす|戦国策 中山策|

第七章 人と接するための心得
怨は深浅を期せず、其れ心を傷うに於いてす
ー怨不期深浅、其於傷心ー 戦国策 中山策
【戦国策:三十三篇。周の元王から秦の始皇帝までの戦国時代の謀臣、策士
らの活躍を各国別に編んだもの。前漢の劉向の編】
原文:
與不期衆少、其於當厄。
怨不期深淺、其於傷心。
吾以一杯羊羹亡國、
以一壺飡得士二人。
書き下し文:
與うるは衆少を期せず、其れ厄に當たるに於いてす。
怨は深浅を期せず、其れ心を傷うに於いてす。
吾一杯の羊羹を以て国を亡ぼし、
一壺の飡を以て士二人を得たり。

意解:
些細な怨みでも、相手の心を傷つければ、手ひどい報いを受ける、の意味。
こちらに其の気がなくても、たった一言で相手を傷つけ、
生涯の敵をつくってしまうこともある。
戦国時代に中山という小さな国があった。この国の王様があるとき、
国中の名士を招いて酒宴を催した。
その席に、司馬子期という人物も招かれていたが、
たまたま羊のスープが足りなくなり、彼のところまで回ってこなかった。
怒った司馬子期は、楚の国に逃亡し、楚王をけしかけて中山を攻撃させた。
楚は大国であり、攻撃を受ければ、小国の中山など、ひとたまりもない。
中山の王(中山君)は国を捨てて他国に逃げ出す、其の道中に從う者二人に、
なぜ、逃げ出す私に從うのかと問うと、答えて、
「父がかつて貧乏で飢えで苦しんでいる時、
あなたに壺飡(壺に入った食物)を頂いて助けていただいた。
その父が死ぬ時に、『中山君に事あらば、必ず行って助力せよ』と。
中山君は深くため息をつき、
「人に物を施すのは多い少ないかではなく、
その人が困っている時に行うことである。
人の怨みを買うのは怨みが深いか浅いかではなく、
その人の心を傷つけたかどうかである。
吾、一杯のスープで国を亡い、一壺の食物で二人の士を得た(心施)」と。
こういった人間関係の機微は、現代でも同じであろう。
書経 夏書 五子之歌に
「怨み豈に明らかなるに在らんや、見えざるをこれ図れ」とある。
訓えとして、人とは仲良くすべきで、けっして見下してはいけない。
人は皆自分よりも勝るところを持ち合わせている。
相手に対しては敬意をはらい、尊重する心を持って接するべきである。
たえず自分の行動を自問自答し、
不満や不信感に繋がりそうな要素を取り除いておくべきで、
災いを未然に防ぐ(事先予防)ためには、
そういう心構えが必要だと言っている。
*参考資料:「中国古典一日一言」守屋洋(著)をもとに、
自分なりに追記や解釈して掲載しています。
私たちは、日々、何をするにしても
大なり小なり、決断(選択)をしている
その折々に思い出し、
より善い選択(決断)ができるように
貴方も私も 在りたいですね。
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