第四章 着実に生きる
面従して退いて後言あることなかれ
ー無面従退有後言ー 書経 益稷
(書経:二十巻。「尚書」のこと。五経の一つ。堯、舜の伝説時代から夏、殷を経て、周代に至る間の政治に関する記録。初めは単に「書」といったが、宋代になって「書経」と呼ばれるようになった。)
{原文}
予違、汝弼。
汝無面從、退有後言。
欽四鄰。 違、戻也。
言我有違戻於道、
爾當弼正其失。
爾無面諛以爲是、
而背毀以爲非。
不可不敬爾鄰之職也。
申結上文弼直鄰哉之義、
而深責之禹者如此。
{書き下し文}
予違わば、汝弼けよ。
汝面從して無かれ、退いて後言有ること。
四鄰を欽め。 違は、戻るなり。
言う、我れ道に違い戻ること有らば、
爾當に弼けて其の失を正すべし。
爾面諛して以て是と爲して、
背き毀れて以て非と爲すこと無かれ。
爾鄰たるの職を敬まずんばある可からず。
申ねて上の文の弼け直くし鄰なるかなの義を結んで、
深く之を禹に責むる者此の如し。
{意解}
聖天子の舜が後継者の禹を戒めた言葉だという。
面と向かっては、はい、はいと相手の意見に従っておきながら、
かげに回って不平不満を並べたり、非難したりする(面従後言)。
そんなことはしてはいけないということである。
私たちが人間関係の中で、犯しがちな過ちの一つである。
常日頃から、余程気をつけておかないと、ついこうなってしまう。
この過ちによって、こちらの人格を低劣に見透かされても止むを終えない、
「後言」は、必ず相手の耳に入る。「これは内緒だ」と念を押せば押すほど、
相手に筒抜けになる。当然、相手としても、いい感情を持つはずがない。その結果、
人間関係を決定的に悪化させてしまう。 言いたいことは直接相手に言う。
言ってはならないことについては、あくまでも沈黙を守ることが望まれる。
戦国策 中山策に「怨みは深浅を期せず、それ心を傷うに於いてす」と語っている。
些細な怨みでも、相手の心を傷つければ、手ひどい報いを受ける。
こちらに其の気がなくても、たった一言で相手を傷つけ、
生涯の敵をつくってしまうこともある。
*参考資料:「中国古典一日一言」守屋洋(著)をもとに、
自分なりに追記や解釈して掲載しています。
私たちは、日々、何をするにしても
大なり小なり、決断(選択)をしている
その折々に思い出し、
より善い選択(決断)ができるように
貴方も私も 在りたいですね。