徳慧術知ある者は恒に疢疾に存す|孟子 盡心章句上 第十八章|

第五章 逆境を乗り越えるための心得

徳慧術知ある者は恒に疢疾に存す
徳慧術知ある者は恒に疢疾に存す

第五章 逆境を乗り越えるための心得

 

徳慧術知とくけいじゅつちある者はつね疢疾ちんしつそん

ー有徳慧術知者恒存乎疢疾ー  孟子 盡心章句上 第十八章
(孟子:七篇。戦国中期の儒家孟軻もうかの言行や学説を編集したもの。
性善説・四端説・天命説・王道説・仁義は有名。四書の一つ)

{原文}

孟子曰、
人之有徳慧術知者、
恒存乎疢疾。

獨孤臣蘖子、
其操心也危、
其慮患也深、
故達。

{書き下し文}

孟子曰く、
人の徳慧術知とくけいじゅつちある者は、
つね疢疾ちんしつそんす。
ひとり、孤臣蘖子こしんげっし
の心をあやつるやあやぶみ、
うれいをおもんばかるやふかし。
ゆえあらわる。

徳慧術知ある者は恒に疢疾に存す
徳慧術知ある者は恒に疢疾に存す


{意解}

徳慧とくけい」とは、立派な人格、
術知じゅつち」とは、素晴らしい才能。
疢疾ちんしつ」は艱難かんなん
故に、立派な人格と素晴らしい才能を併せ持った人物というのは、
艱難辛苦かんなんしんくの中でみがかれてくるものだ、という意味になる。

 恵まれた環境の中で、苦労も知らずにヌクヌクと育つのは、
人間形成の上から言うと、あまりプラスにならないということである。

「孟子」は、「疢疾ちんしつ」の例として、孤臣こしん蘖子げつしをあげている。
孤臣こしんとは組織の中で格別の後ろ盾を持たない家臣、
蘖子げつしとは妾腹しょうふくの子である。
彼らはいずれも自分の立場の弱いことをわきまえ、
諸事に細心の注意を払っているので、
知らぬ間に「徳慧術知とくけいじゅつち」を身につけていくのだという。

「孟子」の言うことにも、確かに一理を感じるが、
中には「疢疾ちんしつ」に押しつぶされてしまう者も少なからず、
━━━━!!楽観はできない。できれば、
「疢疾」を肥やしにして
自分を成長させていくたくましい精神を身につけたいものである。

通俗編に「苦中の苦を受けざれば、人の上の人たること難し」とある。
艱難辛苦かんなんしんくなんじたまにす」 人は困難や苦労を乗り越えることによって、
初めて立派な人間に成長する。「苦中くちゅう」も 「艱難かんなんなんじたまにす」 を
心に抱けばいっこうに苦にならないかもしれない。そういう体験をすれば、
その体験から、人の苦悶くもん苦悩くのう不遇ふぐうも理解できるし、人を見る目もれてくる、
逆境に耐えるたくましさも身についてくる。
こういう人物は 上に立つ、云々うんぬん以前の 人としての畏敬いけいに値する。

畏敬いけい:心から服しうやまうこと。

*参考資料:「中国古典一日一言」守屋洋(著)をもとに、
自分なりに追記や解釈して掲載しています。

私たちは、日々、何をするにしても
大なり小なり、決断(選択)をしている
その折々に思い出し、
より善い選択(決断)ができるように
貴方も私も 在りたいですね。