第一章 大きく生きる
君子に三楽あり
ー君子有三楽ー 孟子 盡心章句上
【孟子:七編。戦国中期の儒家孟軻の言行や学説を編集したもの。
性善説や王道論は有名。四書の一つ】
原文:
孟子曰、
君子有三樂,而王天下不與存焉。
父母俱存,兄弟無故,一樂也。
仰不愧於天,俯不怍於人,二樂也。
得天下英才而教育之,三樂也。
君子有三樂、而王天下不與存焉。
書き下し文:
孟子曰はく、
「君子に三楽あり、而して天下に王たるは、与り存せず。
父母倶に存し、兄弟故なきは、一楽なり。
仰いで天に愧ぢず、俯して人に怍ぢざるは、二楽なり。
天下の英才を得て、之を教育するは、三楽なり。
君子に三楽有り、而して天下に王たるは、与り存せず。」と。
意解:
君子には三つの楽しみがあるが、
天下の王となることはその中に含まれない。
君子のような立派な人物には、
三つの楽しみがあるのだという。
その三つとは何か。「孟子」によれば、こうである。
「父母ともに存し、兄弟故なきは、一の楽しみなり。
仰いで天に愧じず、俯して人に怍じざるは、二の楽しみなり。
天下の英才を得てこれを教育するは三の楽しみなり」
これを箇条書きにすると、つぎのようになる。
一、父母が共に健在で、兄弟がそろって息災であること
一、どこから見ても恥ずかしくない生き方をしていること
一、優れた英才を見出して、その成長を助けてやること
同じように人生を楽しむにしても、
楽しみ方は人それぞれに違っている。
できれば君子の楽しみ方を心がけたいものだ。
且つ、「君子には三つの楽しみがあるが、
天下の王となることはその中に含まれない」と念を押している。
論語 季氏第十六 5に「益者三楽、損者三楽」とある。
礼儀と音楽をほどよく親しみ(節禮楽)、
人の善言善行を褒め称えることを楽しみ(道人之善)、
立派な人柄の友が多いことを喜ぶ(多賢友)ことは、
有益な楽しみである。
おごりて人を見下し、わがまま勝手を振る舞い(驕楽)、
博奕遊芸などに耽ってなまけ遊び(佚遊)、
酒色に耽って安逸(何もせずのんきに過ごす)をむさぼる(宴楽)ことは、
有害な楽しみであると言っている。
されど愉しみの無い人生も味気ない、
ほど良い息抜きとしての驕楽・佚遊・宴楽も必要に思われる。
参考資料:「中国古典一日一言」守屋洋(著)をもとに、
自分なりに追記や解釈して掲載しています。
私たちは、日々、何をするにしても
大なり小なり、決断(選択)をしている
その折々に思い出し、
より善い選択(決断)ができるように
貴方も私も 在りたいですね。