富貴の地に処しては、貧賎の痛癢を知らんことを要す|菜根譚 前集|

第二章 自己を高める

富貴の地に処しては、貧賎の痛癢を知らんことを要す
富貴の地に処しては、貧賎の痛癢を知らんことを要す

第二章 自己を高める

 


富貴ふうきしょしては、貧賎ひんせん痛癢つうようらんことをよう

ー処富貴之地、要知貧賎的痛癢ー   菜根譚 前集 187
(菜根譚:明の洪自誠編。前集222条では人との交わり、事治、対応の道を説き、後集135条では退静閑居の楽しみを論じている)




{原文}

処富貴之地、
要知貧賤的痛癢。
当少壮之時、

須念衰老的辛酸。




{書き下し文}

富貴ふうきしょしては、
貧賎ひんせん痛癢つうようらんことをようす。
少壮しょうそうの時に当たっては、
すべからく衰老すいろう辛酸しんさんおもうべし。

富貴ふうき:金持ちで、かつ地位や身分が高いこと
貧賎ひんせん:まずしく身分が低いこと
痛癢つうよう:精神的、肉体的な苦痛や、物質的な損害
少壮しょうそう:若くて意気盛んなこと
衰老すいろう:「老衰」に同じ
辛酸しんさん:苦しくつらいこと

富貴の地に処しては、貧賎の痛癢を知らんことを要す
富貴の地に処しては、貧賎の痛癢を知らんことを要す




{意解}


財産、地位に恵まれているときにこそ、

貧しく地位の低い人たちの苦しみを理解せよ。
若く元気なときにこそ、
老い衰えたときのつらさを考えよ。  

どちらも、弱者へのいたわりの心と、
人の痛みを理解できる人間であれ、と説いている。

そんな思いやりを持った人間は、見ただけで解るものである。
心の暖かさが容貌や態度ににじみ出て、いかにも穏やかな人柄を感じとれる。
思うに、立派な人格を形成するためには、
人に対する思いやりを持たなければならないということだろう。

取り繕った思いやりではなく、 心からの「仁」である。

近思録に「人に接しては則ち渾てこれ一団の和気」とある。
一見して冷たさを感じさせる人物とか、
トゲトゲしい雰囲気を持った人物のもとには、人は集まってこない。
人に好かれるのは、親しみやすく、なごやかな雰囲気をまとい、
暖かさを感じさせる人物である。それがここで言っている「和気」である。
和気」も「」もまた人間関係を円滑にする重要な条件である。

*参考資料:「中国古典一日一言」守屋洋(著)をもとに、
自分なりに追記や解釈して掲載しています。

私たちは、日々、何をするにしても
大なり小なり、決断(選択)をしている
その折々に思い出し、
より善い選択(決断)ができるように
貴方も私も 在りたいですね。