法は三章のみ|法三章耳|史記 高祖本紀|人心を勝ち取る収攬術|

第八章 リーダーの心得
法は三章のみ
ー法三章耳ー 史記 高祖本紀
【史記:百三十巻。前漢の司馬遷が撰した、中国最初の通史。
上古の黄帝から、漢の武帝までの歴史を紀伝体で記されている】
原文:
吾当王関中、
与父老約、
法三章耳。
殺人者死、
傷人及盗抵罪。
書き下し文:
吾当に関中に王たるべし、
父老と約せむ、
法は三章のみ。
人を殺す者は死し、
人を傷つける者及び盗む者は罪に抵る。

意解:
漢の高祖劉邦が秦を滅ぼした直後、従来の煩雑な法令をすべて廃止し、
法律は三ヶ条だけにとどめたという故事。略して「法三章」ともいう。
劉邦の軍団が関中に入り、秦の都咸陽を陥れたときのことである。
劉邦は、周辺諸県の有力者を集めて、こう約束した。
「諸兄(尊敬の気持を込めて呼ぶ語)は長い間秦の苛酷な法に苦しめられてきた。
ここでわしは諸兄に約束しよう。法は三章だけとする。人を殺した者の死刑、
人を傷つけた者、盗みを働いた者は処罰するが、秦の定めた諸々の法はすべて廃止する。」
この布告が伝えられると、人々は歓呼して迎えたという。
劉邦に対する支持が一気に高まったのである。のちに劉邦が天下を握る基盤が、
このときにつくられたと言える。
信頼を勝ち取る巧みな人心の収攬術であり、
すばらしい政治的配慮であったと言える。
荀子 王制篇第九に「君は船なり、庶民は水なり」とある。
「君主は舟、人民は水」にあたるのだという。
舟が水しだいで安定もし転覆もするように、
君主の座も人民の出方次第で安定もし転覆もする。
ゆえに、君主が自らの地位を安泰にするためには、
何よりもまず人民の信頼を得るように努めなければならないというもの。
*歓呼:喜んで大声をあげること。
*収攬:人の心などをとらえて信頼をかちとること。
*参考資料:「中国古典一日一言」守屋洋(著)をもとに、
自分なりに追記や解釈して掲載しています。
私たちは、日々、何をするにしても
大なり小なり、決断(選択)をしている
その折々に思い出し、
より善い選択(決断)ができるように
貴方も私も 在りたいですね。
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