第八章 リーダーの心得
忠信以ってこれを得、驕泰以ってこれを失う
ー忠信以得之、驕泰以失之ー 大学 傳十章 16
【大学:一巻。もと「礼記」中の一篇であったが、宋代以降、単行本として独立し、朱熹がこれを四書の一としたことから、特に広く読まれるようになった】
原文:
見賢而不能挙、挙而不能先、命也。
見不善而不能退、退而不能遠、過也。
好人之所悪、悪人之所好、是謂払人之性。
災必逮夫身。是故君子有大道。
必忠信以得之、驕泰以失之。
書き下し文:
賢を見て挙ぐること能わず、挙げて先んずること能わざるは命るなり。
不善を見て退くること能わず、退けて遠ざくること能わざるは過ちなり。
人の悪む所を好み人の好む所を悪む、これを人の性に払ると謂う。
災い必ず夫身に逮ぶ。これ故に君子大道あり。
必ず忠信以ってこれを得、驕泰以ってこれを失う。
*払る:反する。道理にそむく。
意解:
賢人を見て採用することができず、
採用してもこれを活用することができないのは、
主君の怠慢である。
不善を見て退けることができず、
退けて遠くに追い払うことができないのは、
主君の過失である。
人が憎んでいることを好んでする、人が好んでいることを嫌ってしない、
これは人間の本性・道義に悖るといわれる振る舞いである。
そういった本性に悖る行為をしていると、災いが必ずその身に及ぶことになる。
このため、君子には仁義の大道があるのである。
必ず真心を忘れずに忠義・誠実を尽くせば天下を得るが、
驕慢になって我がまま放題をすれば必ず天下を失うことになる。
*悖る:そむく。反する
*驕慢:おごりたかぶること。人をあなどって勝手にふるまうさま。
これも上に立つ者の心構えを語った言葉である。
「忠」のもともとの意味は、君(君主)に対する忠ではなく、
自分に対する忠である。
つまり、自分を欺かないこと。
「信」とは、嘘をつかないという意味。
故に、「忠信」で、誠実とか真面目といった意味になる。
また、「驕」は人を見下すこと、
「泰」は勝手気儘、デタラメという意味だ。
これを得、これを失うの「これ」は、「人々の支持」と解することができる。
だから、ことば全体の意味は、人々の支持を集めるには、
「忠信」を必要とし、逆に、人々の支持を失うのは、
「驕泰」が原因である、となる。
「忠信」が果たして十分条件であるかどうかについては、疑問もないではない。
だが、「驕泰」によって墓穴を掘ったリーダーの例は、無数にある。
できるだけ、「忠信」を旨とし、「驕泰」にならぬよう自らを戒める、
これもまたリーダーにとっては必要な心構えであろう。
論語 泰伯 第八では「士は以って弘毅ならざる可からず」とある。
リーダーの立場にある人間は、「弘毅」でなければならないのだという。
「弘」とは広い見識、「毅」とは強い意志力である。
広い見識をもたなかったら、視野狭窄症におちいり、
たちまち壁にぶつかってしまう。また、
強い意志力を身につけていなかったら、困難にぶつかった場合、
粘り強く打開していくことができない。
いずれもリーダーに必要な要素なのである。と云っている。
*参考資料:「中国古典一日一言」守屋洋(著)をもとに、
自分なりに追記や解釈して掲載しています。
私たちは、日々、何をするにしても
大なり小なり、決断(選択)をしている
その折々に思い出し、
より善い選択(決断)ができるように
貴方も私も 在りたいですね。