黙してこれを成し、言わずして信あるは徳行に存す|易経 繋辞上伝
第八章 リーダーの心得
黙してこれを成し、言わずして信あるは徳行に存す
ー黙而成之、不言而信、存乎徳行ー 易経 繋辞上伝 第十二章 大有上九
【易経:「易」または「周易」ともいう。五経の一つ。卜筮の法によって、倫理道徳を説いたもの。上下の「経」と、その注釈篇である。「十翼」からなり、十翼は孔子の編と伝えられている】
原文:
極天下之賾者存乎卦、
鼓天下之動者存乎辭。
化而栽之存乎變、
推而行之存乎通。
神而明之、存乎其人。
黙而成之、不言而信、存乎德行。
書き下し文:
天下の賾を極むるものは卦に存し、
天下の動を鼓するものは辞に存す。
化してこれを栽するは変に存し、
推してこれを行なうは通に存す。
神にしてこれを明らかにするは、その人に存す。
黙してこれを成し、言わずして信あるは徳行に存す。
口語訳:
天下の奥深い道理を極めるものは卦にあり、
天下の動きを振るいたたせるものは辞にある。
姿をかえて元と違った形になってこれをほどよいところにできるものは変にあり、
考えをおし進めてこれを動かし進ませるものは通にある。
神秘にしてこれを明らかにするものは人にある。
だまってこれをなし、言わずにまことがあるものは徳行にある。
*参考資料:易経を学ぼう
意解:
あえて命令しなくても仕事が順調に運び、
黙って座っていても人々の信頼を集めることができるのは、
その人の「徳行」によるのだという。「徳行」とは、立派な行いである。
地位や能力で部下を使うやり方ではなく、
その人の持っている人間的魅力によって
部下を引っ張っていくやり方である。
いささか迂遠なやり方ではあるかもしれないが、
組織がピンチに立たされたときなど、
このほうがはるかに威力を発揮するかもしれない。
地位や能力で部下を使おうとすれば、
命令には従わせることができるかもしれないが、
心服はされない。そういう部下は、何か事が起こると、
すぐに離れていく。離れていく部下が悪いのではない。
彼らの心をとらえられないリーダーの側に責任があるのだ。
そうならないためには、リーダーたる者、普段から徳を養い、
その徳によって部下を動かすことを心がけなければならない。
三国志 孫権 名言に「その長ずる所を貴び、その短なる所を忘る」がある。
呉の孫権の幕下からは有能な人材が何人も育ち、
孫権は彼らの活躍により呉の存続、生き残りに成功している。
その孫権が「わしはこういう態度で部下に臨んでいる」と、
自ら語っている言葉である。訳せば、
「部下の短所には目をつぶり、長所を発揮できるような態度で部下に臨んだ」
となるであろう。
人は叱られるよりも、褒められることによって、
やる気も出るし、成長もする。短所をあげつらうよりも、
孫権のように長所を褒めてやるほうが、部下を使いこなす、
また、人と接する上手なコツなのかもしれない。
*参考資料:「中国古典一日一言」守屋洋(著)をもとに、
自分なりに追記や解釈して掲載しています。
私たちは、日々、何をするにしても
大なり小なり、決断(選択)をしている
その折々に思い出し、
より善い選択(決断)ができるように
貴方も私も 在りたいですね。
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