民、信なくんば立たず|民無信不立|論語 顔淵第十二|

第三章 社会を考える

民、信なくんば立たず
民、信なくんば立たず

第三章 社会を考える

 

たみしんなくんばたず

ー民無信不立ー   論語 顔淵第十二
(論語:十巻二十編。孔子や孔子の門弟の言行を記したもの。
儒家の聖典とされている。四書の一つ)




{原文}

子貢問政。
子曰、足食、足兵、民信之矣。
子貢曰、必不得已而去、於斯三者何先。
曰、去兵。
曰、必不得已而去、於斯二者何先。
曰、去食。自古皆有死、民無信不立。




{書き下し文}

子貢しこうまつりごとを問う。
子日く、しょくし、へいを足し、
たみこれしんにす。

子貢日く、かならむをずして去らば、
三者さんしゃおいいずれをか先にせん。
子日く、へいらん。
子貢日く、かならむをずして去らば、
の二者においいずれをか先にせん。
子日く、食を去らん。
いにしえり皆死り、民しん無くんば立たず。

民、信なくんば立たず
民、信なくんば立たず




{意解}

子貢が政治の要道を問うた。
孔子は、「食糧を満たし、軍備を充実し、人民に信義を持たせることだ」と答えた。
子貢は、「国情からして三つ同時進行が無理だとしたら、
何を後回しにすべきでしょうか?」と問うた。
孔子は、「軍備を後回しにしよう」と答えた。
更に子貢は、「国情からして残りの二つさえ同時進行が無理だとしたら、
どちらを後回しにすべきでしょうか?」と問うた。
孔子は、「食糧を後回しにしよう。
食糧が不足すれば餓死する者も出て来ようが、

食い物が有ろうが無かろうが、人は皆いつかは死ぬものだ。
もし人民が信義を失ってしまったら、禽獣きんじゅうと同じになって、
人間社会は成り立つものではない」と答えた。  

 孔子の考えを甘いと批判する人がいるかもしれない。
食を足らしめずして、信義の確立はできないと。
が、その気概きがいは見習うべきであろう。

人間関係に於いても、然りだろう。

然し、食べることに事欠いている状態では、互いに相手の信頼や期待を
裏切らないように誠実に行動することは難しいだろう。

孟子 卷之四 離婁章句 上9にも
桀紂の天下を失うやその民を失えばなり」とある。
弱肉強食の論理が優先される戦国時代に、軍事力による覇道政治はどうせいじいましめて、
道徳による王道政治の理想を説いている。内憂外患ないゆうがいかんという言葉がある。
国を滅ぼし組織を瓦解がかいさせるのは、 この二つの原因であるが、
せんじつめれば、 外患(外国や外部からの問題)も
また内憂(国や組織などの心配事)によって招来されることが多い。
相手の信頼や期待を裏切らないように誠実に行動することが重要に思われる。

*参考資料:「中国古典一日一言」守屋洋(著)をもとに、
自分なりに追記や解釈して掲載しています。

私たちは、日々、何をするにしても
大なり小なり、決断(選択)をしている
その折々に思い出し、
より善い選択(決断)ができるように
貴方も私も 在りたいですね。