
虎穴にいらずんば、虎子を得ず
第六章
虎穴にいらずんば、虎子を得ず
ー不入虎穴、不得虎子ー 後漢書 班超伝
(後漢書:百二十巻。本紀十巻、列伝八十巻は、南北朝時代、南朝宋の氾嘩の撰で、
志三十巻は晋の司馬彪の続漢書から取っている。)
{原文}
超曰、
「不入虎穴、不得虎子。
當今之計,
獨有因夜以火攻虜,
使彼不知我多少,
必大震怖,可殄盡也。
滅此虜,則鄯善破膽,
功成事立矣。」
{書き下し分}
超曰く、
「虎穴にいらずんば、虎子を得ず。
当今の計、
獨だ夜に因りて火を以て虜を攻むることあるのみ、
彼をして我が多少なるを知らざらしむれば、
必ず大いに震怖し、殄盡すべし。
この虜を滅すれば即ち鄯善破膽し、
成事をなす功ならん。」
*震怖:ふるえおそれること

虎穴にいらずんば、虎子を得ず
{意解}
班超が言うには「危険を冒さなければ、成功することはない。
今の計略としては、夜に鄯善(服属後の匈奴の一支族)の使者の宿営を、
火攻めにすることだけである。相手にこちらの勢力を知られなければ、
必ず恐怖に駆られ全滅するだろう。この使者を滅ぼせば鄯善は驚いて、
(漢の勢いを示すことが)うまくいく。」
後漢王朝のとき、西域の経略に活躍したのが、
班超という人物である。
わずかな供回りを従えて鄯善という国に使いした時のこと。
初めは、丁重な態度で迎えてくれた鄯善王の態度が、
匈奴からの使者が来たとたん、ころりと態度が変わってしまう。
鄯善王は匈奴の勢いに恐れをなし、
班超ら漢の使者に対する態度を変えたのだった。
そのとき班超が、部下を集めて檄を飛ばした言葉である。
その夜、匈奴使節団の幕舎を襲って、ことごとく討ち取った。
鄯善王はふるえあがって漢への服属を誓ったという。
班超のこのことばは、思い切った決断を表明したことばである。だが、
決断の前には熟慮がなければ、成功は見えてこない。
班超の場合も、決断、実行する前には、
十二分に匈奴側の動静を調べ上げていたことを忘れてはならない。
孫子 謀攻篇に「彼を知り己を知れば、百戦殆うからず」とある。
何事においても、主観的、一面的に判断をしてしまうことを戒めたことばである。
*参考資料:「中国古典一日一言」守屋洋(著)をもとに、
自分なりに追記や解釈して掲載しています。
私たちは、日々、何をするにしても
大なり小なり、決断(選択)をしている
その折々に思い出し、
より善い選択(決断)ができるように
貴方も私も 在りたいですね。