第七章 人と接するための心得
朋友に処するに、務めて相下れば則ち益を得、
相上げば則ち損ず
ー処朋友、務相下則得益、相上則損ー 伝習録 修養
【伝習録:三巻。明の王陽明の語録を、門人らが編集したもの。陽明のとなえた知行合一の趣旨が述べられており、陽明学を学ぶには必見の書】
原文:
処朋友、務相下則得益、相上則損。
大凡朋友、須箴規指摘処少、
誘掖奨勧意多、方是。
與朋友論學,須委曲謙下,
寬以居之。
書き下し文:
朋友に処するに、務めて相下れば則益を得、相上げば則ち損す。
大凡朋友は、すべからく箴規指摘する処少なく、
誘掖奨勧の意多くして、方に是なり。
朋友と学を論ずるには、すべからく委曲謙下し、
寛以ってこれに居るべし。
意解:
「友人(陽明の仲間達)と付き合うには、相手に学ぶように努めればプラスとなり、
相手を見下すような態度で接すればマイナスにしかならない」、
「友人に対しては、なるべく相手をいましめたり、欠点をあばいたりするよりは、
助け合ったり励ましたりしなければならない」
「友人と議論する時には、できるだけ謙虚と寛容な態度で接しなければならない」
と云う。
ゆうまでもなく、完璧な人間はいない。
誰しも欠点の一つや二つはあるのが人間である。
それなのに、へんに偉ぶって相手を見下していたのでは、
いたずらに相手の反発を買うことになる。そうなると、
相手はなにもいってくれなくなるし、
結果として自分の進歩も向上も望めなくなる。
故に、謙虚であれ、寛容であれ、と語っている。
一緒に仕事をしている仲間との間でも、全く同じことが言えるのでは!
謙虚と寛容、この二つを心がけることが、人間関係を善くする道でもあり、
自分を向上させる道でもある。
菜根譚 前集 17項にも「世を処するに一歩を譲るを高しとなす」がある。
人生は一歩譲って生きること
(自説を一部分引っ込めて、相手の主張を少し認めること)が、
自分が進歩成長する伏線となる。
人には寛大に接することが結局、実益につながる。
人のためを忖度(他人の気持ちや考えを推しはかる)することが、
結局は自己の利益を守ることになると言っている。
人はそれぞれ自分が得てきた経験、知識は違うもの、それらを考慮し、
一歩譲って相手の主張を理解し認めることも必要だろう。
*参考資料:「中国古典一日一言」守屋洋(著)をもとに、
自分なりに追記や解釈して掲載しています。
私たちは、日々、何をするにしても
大なり小なり、決断(選択)をしている
その折々に思い出し、
より善い選択(決断)ができるように
貴方も私も 在りたいですね。