花発けば風雨多く、人生別離足る|花発多風雨、人生足別離|唐詩選|
第七章 人と接するための心得
花発けば風雨多く、人生別離足る
ー花発多風雨、人生足別離ー 唐詩選 勧酒
【唐詩選:七巻。唐代の詩人百二十七名の詩の選集。明の李攀竜の選といわれているが、偽託説もある】
意解:
于武陵という人の「勧酒」(酒を勧む)と題する「五行絶句」の一節。
中国の詩には、友人との別れを歌ったものが多い。
別れには酒がつきものだ。これも、そういった詩の代表的なものである。
全文を掲げると、
勘君金屈巵、 君に勧む金屈卮
満酌不須辞、 満酌辞するを須いず
花発多風雨、 花発けば風雨多し
人生足別離。 人生別離足る
和訳(直訳) | (井伏鱒二の名訳) |
君に この金色の大きな杯を勧める | コノサカヅキヲ受ケテクレ |
なみなみと注いだこの酒 遠慮はしないでくれ | ドウゾナミナミツガシテオクレ |
花が咲くと 雨が降ったり風が吹いたりするものだ | ハナニアラシノタトヘモアルゾ |
人生に 別離はつきものだよ | 「サヨナラ」ダケガ人生ダ |
ちなみに「金屈巵」は金の杯、「足る」は多いという意味。
「満酌辞するを須いず」なみなみと注ぐが、遠慮はいらない。
「花には嵐、人には別れ」、とかくままならないのが浮世の常だ。
せめてこうして会っているときだけでも、
お互い杯を挙げて歓を尽くそうではないか、というもの。
あなたにも別れを惜しむ友人、親友、そして再会した家族との別れを惜しみながら、
見送るプラットホームでの心情は常日頃から体験して共感できるだろう。
漢書 蘇武伝にも「人生は朝露の如し」とある。
人生は儚く短いことを嘆いたことばである。
同じように「三国志|曹操の短歌行」に
「酒に対しては当に歌うべし 人生 幾何ぞ、譬えば朝露の如し 去日 苦だ多し」と詠っている。短い人生、もっと楽な生き方をしてはどうかとすすめている。