我に投ずるに桃を以ってすれば、これに報ゆるに李を以ってす

第七章

我われに投とうずるに桃ももを以もってすれば、
　　これに報むくゆるに李すももを以もってす

ー投我以桃、報之以李ー　　詩経
【詩経：中国最古の詩集。周初から春秋時代中ごろまでの詩を集めている。
現存するものは三百五篇。五経の一つで、初めは単に「詩」といったが、
宋代以降「詩経」と呼ばれるようになった】

原文：
投我以桃、
報之以李。

書き下し文：
我われに投とうずるに桃ももを以もってすれば、
これに報むくゆるに李すももを以もってす。

我に投ずるに桃を以ってすれば、これに報ゆるに李を以ってす

意解：

桃ももをもらったら李すももをもってお返しをするということ。私達は日々の生活の中で、
様々な人から、お互いに恩恵おんけいや恩義おんぎをこうむりながら生きている。
どんな些細ささいな恩義おんぎでも、受けた恩義おんぎには必ずお返しをする（返礼）というのは、
基本的な人生作法の一つである。

「一飯いっぱんの徳とくも必かならず償つぐない」（史記しき－范雎蔡沢はんしょさいたく列伝）という記述もある。

原文：
一飯之徳必償、睚眦之怨必報。

書き下し文：
一飯いっぱんの徳とくも必かならず償つぐない、睚眦がいさいの怨うらみも必かならず報むくゆ。

＊睚眦（がいさい）：ちょっと睨にらまれたくらいの僅わずかな怨うらみ

「睚眦がいさいの怨うらみも必かならず報むくゆ」とちょっと怖い記述であるが史記は事実の追求という史書編纂ししょへんさんの目的においての記述だろう。外交戦略上、恩おんにしても怨うらみにしても淡泊たんぱくではないという国民性も知っておくべきと思われる。

人は知らず知らずのうちに相手に与えてしまっている怨うらみ、分かっていて駆け引き上、相手より優位になるための威嚇いかく等、人間関係は複雑に絡み合っている。

だが、おかえし、償つぐないのできるものはしたほうがいい。些細ささいな怨うらみでも背負せおったまま人生を終わるのは、できるだけ避さけたいものである。

書経 夏書 五子之歌に「怨み豈に明らかなるに在らんや、見えざるをこれ図れ」ともある。訓おしえとして、人とは仲良くすべきで、けっして見下してはいけない。人は皆自分よりも勝るところを持ち合わせている。相手に対しては敬意けいいをはらい、尊重そんちょうする心を持って接するべきである。何度も過失や失敗を繰り返していれば、不信感が募つのるのも明らかで、
言動に表れる前に、目に見えない段階でそれを察知さっちし、手を打つべきである。
そのためには、たえず自分の行動を自問自答し、不満や不信感に繋がりそうな要素を取り除いておくべきで、災いを未然に防ぐ（事先予防）ためには、そういう心構えが必要だと言っている。

＊参考資料：「中国古典一日一言」守屋洋(著)をもとに、
自分なりに追記や解釈して掲載しています。

私たちは、日々、何をするにしても
大なり小なり、決断（選択）をしている
その折々に思い出し、
より善い選択（決断）ができるように
貴方も私も　在りたいですね。