士は以って弘毅ならざる可からず

第八章

士しは以もって弘毅こうきならざる可べからず

ー士不可以不弘毅ー　　論語 泰伯 第八
【論語：十巻二十編。孔子や孔子の門弟の言行を記したもの。
儒家の聖典とされている。四書の一つ】

原文：
曾子曰、
士不可以不弘毅。
任重而道遠。
仁以為己任。不亦重乎。
死而後已。不亦遠乎。

書き下し文：
曾子曰く、
士しは以もって弘毅こうきならざる可べからず。
任重にんおもくして道遠みちとおし。
仁以じんもって己おのが任にんと為なす。亦また重おもからずや。
死しして後のち已やむ。亦遠またとおからずや、と。

士は以って弘毅ならざる可からず

意解：

曾子曰そうしいわく、「士したる者は、広い見識を持ち、意志が強固でなければならない。
その任務は重大で、その道のりは遠い。
仁道じんどうを体得たいとくし、それを世に広めることを、自己の任務としている。
なんと重いことではないか。
死ぬまで続けなくてはならない。なんと遠いことではないか」と。

「士し」とは、「士農工商しのうこうしょう」などということばからも察さつせられるように、
人の上に立つ人、つまり、リーダーの立場にある人物を指している。
そういう立場にある人間は、「弘毅こうき」でなければならないのだという。
「弘こう」とは広い見識、「毅き」とは強い意志力である。

広い見識をもたなかったら、視野狭窄症しやきょうさくしょうにおちいり、
たちまち壁にぶつかってしまう。
また、強い意志力を身につけていなかったら、困難にぶつかった場合、
粘り強く打開していくことができない。
いずれもリーダーに必要な要素なのである。

孔子の高弟で、孝心こうしんが厚く、孝こうと信しんとを道徳行為の根本とする曾子そうし、
この教育者としての曾子のことばは、重く響いてくる。
現代のリーダー達の「座右の銘」としてほしいものである。

＊参考資料：「中国古典一日一言」守屋洋(著)をもとに、
自分なりに追記や解釈して掲載しています。

私たちは、日々、何をするにしても
大なり小なり、決断（選択）をしている
その折々に思い出し、
より善い選択（決断）ができるように
貴方も私も　在りたいですね。